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DATA STORY

1500年の世界で最も豊かだったのは
中国とイタリアだった

西暦1500年、中国明朝の一人あたりGDPは$1,207、 イタリアは$2,703。ヨーロッパ全体ではイタリアが最強だった。 1820年の産業革命が「大分岐」を引き起こし、英国が急浮上。 日本は1820年$1,317から2018年$38,674まで30倍に成長した。 マディソンプロジェクトの2000年データで見る、文明の栄枯盛衰。

$1,207
1500年 中国のGDP/人
$3,306
1820年 英国(産業革命)
29
日本の200年成長(1820→2018)
$55,335
2018年 米国のGDP/人

マディソンプロジェクトが見せる2000年の経済史

経済史の中で最も重要な疑問の一つは「なぜ19世紀に西洋が他の文明を一気に引き離したのか」だ。 この「大分岐(Great Divergence)」が起きる前、 世界は必ずしも西洋優位ではなかった。

マディソンプロジェクト(オランダ・フローニンゲン大学)は、 アンガス・マディソン博士が40年かけて構築した経済史統計を引き継ぎ、西暦1年から2018年までのGDP/人の推移を世界中の国で推計している。 これは人類史上もっとも野心的な経済データベースの一つだ。

このページでは、そのデータから17カ国を選び、 西暦1年・1000年・1500年・1820年・1913年・1950年・2018年などの キーマイルストーンでGDP/人を並べ、文明の興亡と大分岐の構造を可視化する。

西暦1年〜2018年のGDP/人推移

国ボタンを押すと表示切替。Y軸は対数スケール(縦一刻みで10倍差)

Y軸は対数スケール。縦一刻みで10倍のGDP差を表す。2011年基準USD(購買力平価)

1820年を境にグラフが急激に立ち上がる。これが「産業革命以降の大分岐」。 18世紀まで世界のGDP/人は$800〜$2,500の狭いレンジに収まっていたが、 英国・欧州・米国が先に離陸し、日本が1870年以降に追随、 中国・インドは20世紀後半まで低迷した。

1500年——大航海時代の直前

コロンブスのアメリカ到達から8年後。当時の一人あたりGDPランキング

驚きの順位。1位はイタリア($2,703)、2位オランダ($2,332)、 3位ドイツ($1,827)、4位イギリス($1,697)。 そして中国明朝は$1,207でイギリスに近い。 西欧は既にリードしていたが、中国との差は1.4倍程度。 この差が産業革命後の300年で10倍以上に開く。

⚙️ 1820年——産業革命が全てを変えた

1820年のイギリスGDP/人は$3,306。1500年($1,697)の約2倍。 同じ300年で、中国は逆に$1,207→$882に縮小している。 明朝から清朝への移行、人口爆発、銀の流入と離脱—— 中国経済は停滞どころか後退した。

この時点で英国:中国比は3.7倍。 蒸気機関、製鉄技術、海外植民地の原料と市場が、 英国に前例のない加速度を与えた。 インドも$937まで低下し、植民地化の経済的基盤が整った。

日本は1820年時点で$1,317。中国よりは豊かだったが、 英国の40%に過ぎない。この位置から明治維新に賭けた選択が、 世界史の中で最もドラマチックな「後追い成功」を生むことになる。

1500年 vs 2018年——500年で何が変わったか

2018年順の表。1500年からの倍率が歴史的な勝者・敗者を示す

15002018倍率
アメリカ$55,335
オランダ$2,332$47,47420.4倍
ドイツ$1,827$46,17825.3倍
日本日本$38,674
フランス$1,694$38,51622.7倍
イギリス$1,697$38,05822.4倍
韓国$37,928
イタリア$2,703$34,36412.7倍
スペイン$1,412$31,49722.3倍
ロシア$24,669
トルコ$768$19,27025.1倍
メキシコ$16,494
ブラジル$14,034
中国$1,207$13,10210.9倍
エジプト$1,084$11,95711.0倍
インド$6,806
ナイジェリア$5,238

1500年に世界のトップを走っていたイタリア($2,703)は2018年$34,364で12.7倍。 同期間で英国は22.4倍、日本はデータなしだが1820年比で29倍。最大の逆転は韓国——1820年$816→2018年$37,928で46倍。 米国は1700年時点では辺境の$1,769だったが、現在は世界最高水準の$55,335。

🇯🇵 日本——1870年から始まった30倍の奇跡

1870年の日本GDP/人は$1,580。英国の27%、米国の33%。 明治維新から2年、近代化が始まったばかり。 しかし1913年には$2,431、1950年には戦後復興の底から $3,062まで下がったものの、その後20世紀後半で驚異的な追い上げを見せる:

  • 1950年: $3,062(米国の20%)
  • 1980年: $21,404(米国の72%)— 高度成長の頂点
  • 2000年: $33,211(米国の72%)— バブル崩壊後の停滞
  • 2018年: $38,674(米国の70%)— 30年で追いつけず

日本の「30倍成長」は1820年→2018年の200年で見れば事実。 しかし1990年以降の30年はほとんど成長していない。 韓国($37,928)が日本に追いつき、シンガポール(データなしだが$90,000超)は追い越している。 19世紀と20世紀の奇跡が、21世紀にどこで止まったのかがこのデータに見える。

2018年——大分岐の現在地

マディソンデータの最新年

1位はオランダ($47,474)。米国$55,335もほぼ同水準だが、 500年前の上位国(オランダ・イタリア・イギリス)が今も上位圏。 西欧の「制度の連続性」が経済力の持続につながっている。 日本・韓国・台湾・シンガポールは19世紀には圏外だったが、 20世紀の逆転でここまで来た。中国は$13,102で依然として中位。 インドは$6,806で「もう一つの大分岐」からまだ抜け出せていない。

なぜこのデータが重要なのか

🌏

現在の世界秩序は一時的

西洋優位は過去500年程度の話。 それ以前の1,500年間は中国・インド・中東が世界経済の中心だった。 「西洋vs非西洋」という枠組みはこの200-300年の現象で、 今後も続くとは限らない。

⚙️

技術革命は指数的に効く

1820年以前、GDP/人は1000年かけて2倍になるかどうか。 1820年以降、わずか200年で世界平均は10倍以上。 産業革命・電気・IT革命は単なる利便性向上ではなく、 文明のスケールを桁違いに変える出来事だった。

🇯🇵

日本の位置は奇跡の結果

1820年の日本はアジアの中堅国。 200年後にG7の一角を占めているのは、明治維新・戦後復興という 二度の大転換の結果。 「日本人は優秀だから」ではなく、歴史的な選択の積み重ねが今の位置を作った。

📉

衰退も数世代で起きる

中国は1500年時点で世界最大の経済。そこから300年かけて後退した。 オランダは17世紀の覇権から20世紀には普通の国へ。 長い歴史では、現在の位置は流動的。 日本の30年停滞も、次の100年から見れば 「一時的な踊り場」か「転落の始まり」か、まだわからない。

2000年を見て、100年後を考える

マディソンのデータは、現在の世界地図がいかに最近の産物かを教えてくれる。 西暦1年には中国とローマが世界のGDPの半分を占めていた。 1500年にはインドと中国で世界の45%。 アメリカは1700年時点で$1,769という新興国だった。

歴史は長く、秩序は脆い。 19世紀の産業革命以降、西洋が世界の頂点に立ったのはわずか200年前のこと。 そしてその西洋優位の終わりが今、静かに始まっている可能性がある。 中国は2018年にまだ米国の24%だが、年5%で伸びれば2050年には追いつく。

日本はこの2000年史の中で、「辺境から先進国へ飛躍した稀有な国」だ。 奇跡は一度起きたのだから、次も起こせるのか—— それともオランダのように緩やかに普通の国に戻るのか。 2000年の経済史は、100年先を考えるための最良の教科書だ。

📚 データ出典

Bolt, Jutta and Jan Luiten van Zanden (2020), 'Maddison style estimates of the evolution of the world economy. A new 2020 update'

単位: 2011年基準USD(購買力平価)。各マイルストーン年に実データが無い場合、 前後30年以内の最も近い年の値を使用している。 新興国・途上国では1500年以前のデータが欠落している国が多い。

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